物理基礎|力と運動(4)摩擦力
摩擦力は「押しつける力」で決まり、面積では決まらない
押しても動かないとき、床は押す力と同じ大きさの摩擦力を返しています。押す力を強くしていくと、ある大きさ(最大摩擦力)で動き出し、動いている間は少し小さい摩擦力(動摩擦力)になります。予想してから5つのステップで確かめよう。
ことばの準備
さきに知っておくこと
- 摩擦力物体が面の上をすべるのをさまたげる向きにはたらく、面からの力
- 静止摩擦力止まっているときの摩擦力。押す力と同じ大きさで逆向き(つりあい)
- 最大摩擦力静止摩擦力の限界の大きさ。これをこえる力で押すと動き出す
- 動摩擦力動いているときの摩擦力。最大摩擦力より少し小さく、速さによらず一定
- 摩擦係数 μ(ミュー)面の材質で決まる数(単位なし)。すべりやすい面ほど小さい。μ' は動いているときの値
- 垂直抗力 N面が物体を押し返す力。水平な床なら N = mg
ステップ1
押しても動かないとき、床からの力は?
予想:床の上の箱を 4 N で水平に押したが、動かなかった。このとき、床が箱におよぼす摩擦力は?
青=押す力、赤=摩擦力。μ:静止摩擦係数、μ':動摩擦係数。g = 9.8 m/s²。
予想を選ぶと、ここで条件を変えられるようになります。
ためしてみよう
ここが大事
ステップのまとめ
摩擦力のまとめ
| 状態 | 摩擦力 | ことばで言うと |
|---|---|---|
| 止まっている(静止摩擦力) | 押す力と同じ大きさ(逆向き) | つりあいで決まる。決まった値ではない |
| 動き出す直前(最大摩擦力) | F₀ = μN | 静止摩擦力の限界。これをこえると動き出す |
| 動いている(動摩擦力) | F' = μ'N(μ' < μ) | 速さによらず一定。最大摩擦力より小さい |
摩擦力は「材質(μ)」と「押しつける力(N)」で決まり、接触面の面積にはよらない。
この図は理解のためのモデルです。μ・μ' の値は材質ごとの目安で、実際の値は表面の状態で変わります。
公式
この単元の式
| 名前 | 式 | ことばで言うと・単位 |
|---|---|---|
| 最大摩擦力 | F0 = μN | 動き出す直前の摩擦力 = 静止摩擦係数 × 垂直抗力μ:静止摩擦係数。N = mg(水平な床) |
| 動摩擦力 | F′ = μ′N | 動いているときの摩擦力 = 動摩擦係数 × 垂直抗力μ' < μ。速さによらず一定 |
| 静止摩擦力 | f = F(押す力) | 止まっているなら、押す力と同じμN は「限界」であって、止まっているときの値ではない |
まちがえやすい:止まっているときの摩擦力を μN と書いてしまう。μN は最大値。止まっているときはつりあいから求める。
重要語句
この単元でおさえること
確認問題へ問題ページへ →実験道具:慣性の実験摩擦のある床とない床で、台車の動きを比べよう →実験のあとに読む
なぜ「動き出すとき」がいちばん重いのか
何を比べる?
押す力を 0〜8 N に変えたときの静止摩擦力、床の材質を変えたときの最大摩擦力、動き出したあとの摩擦力、質量を変えたときの最大摩擦力、接する面を変えたときの最大摩擦力を比べます。
結果をどう考える?
重い家具を押すとき、動き出す瞬間がいちばん重く、動き出すと急に軽くなります。これは、静止摩擦力の限界(最大摩擦力 μN)が、動いているときの動摩擦力 μ'N より大きいからです。摩擦力は面の材質と押しつける力で決まり、面積が広くても 1 か所あたりの押しつけが弱くなるので、合計は変わりません。
まちがえやすい点・モデルの条件
止まっている物体の摩擦力を、いつも μN と書いてしまうまちがいが多いです。μN は「限界の値」で、止まっているときの摩擦力は押す力と同じ(つりあい)です。
制作:現役の理科教員 / 制作の考え方