物理基礎|熱(3)熱と仕事
仕事は全部 熱にできるが、熱は全部 仕事にできない
仕事と熱は、どちらもエネルギーのやりとりです。こすると熱くなる(仕事→熱)、エンジンは熱で動く(熱→仕事)。でも熱を全部 仕事にはできません。中学のふり返りから始めて、予想してから5つのステップで確かめよう。
ことばの準備
さきに知っておくこと
- 仕事 W と熱量 Qどちらもエネルギーのやりとりの量。単位は同じ J(ジュール)
- 内部エネルギー物体の中の粒子がもつ熱運動のエネルギーの合計。温度が高いほど大きい
- ΔU(デルタユー)内部エネルギーの「増えた分」
- 熱機関熱を仕事に変える装置。エンジン・蒸気タービンなど
- 熱効率 e受け取った熱のうち、仕事になった割合。e = W ÷ Q₁(0〜1、% でも表す)
- 不可逆もとにもどらない変化。熱→仕事の変換や、熱の移動には向きがある
ステップ1
こすると熱くなるのは、なぜ?
予想:木の板を机にこすりつけると、温かくなった。これは、どんなエネルギーの変化?
赤=熱、青=捨てる熱、緑=仕事。水の比熱 4.2 J/(g·K)。
予想を選ぶと、ここで条件を変えられるようになります。
ためしてみよう
ここが大事
ステップのまとめ
熱と仕事のまとめ
| ことば・式 | ことばで言うと |
|---|---|
| 仕事 → 熱 | 摩擦などで、した仕事はそのまま熱になる(W = Q)。ジュールの実験 |
| 内部エネルギー U | 物体の粒子の熱運動のエネルギーの合計。温度が上がると増える |
| 熱力学第一法則 | 与えた熱 Q = 内部エネルギーの増加 ΔU + 外にした仕事 W |
| 熱機関・熱効率 | e = W / Q₁。受け取った熱の一部だけが仕事になり、残りは捨てられる |
| 熱力学第二法則 | 熱を全部 仕事にはできない(e < 100%)。熱は自然には低温 → 高温に移らない |
この図は理解のためのモデルです。ジュールの実験では仕事が全部 熱になるとし、熱機関の熱効率は種類ごとの目安です。
公式
この単元の式
| 名前 | 式 | ことばで言うと・単位 |
|---|---|---|
| 仕事と熱 | W = Q | した仕事 = 発生した熱量摩擦などで仕事が全部 熱になるとき。1 cal = 4.2 J |
| 熱力学第一法則 | Q = ΔU + W | 与えた熱 = 内部エネルギーの増加 + 外にした仕事W は気体が外にした仕事。エネルギー保存の式 |
| 熱効率 | e = W / Q1 = (Q1 − Q2) / Q1 | 熱効率 = 仕事 ÷ 受け取った熱Q₁:受け取った熱、Q₂:捨てた熱。必ず e < 1 |
第一法則は「エネルギーの量は保存される」、第二法則は「変換には向きがある(熱を全部 仕事にはできない)」。
重要語句
この単元でおさえること
確認問題へ問題ページへ →実験道具:加熱曲線加えた熱と温度の関係を、自由に調べよう →実験のあとに読む
なぜ「熱→仕事」は全部できないのか
何を比べる?
こする回数を変えたときの温度、おもりの仕事を変えたときの温度上昇、気体が外にする仕事を変えたときの内部エネルギーの増加、熱機関の仕事を変えたときの熱効率、熱機関の種類を変えたときの捨てる熱を比べます。
結果をどう考える?
仕事は、粒子の乱雑な運動(熱)に変えるのは簡単です。でも、乱雑に動いている粒子の運動を、全部そろえて一方向の仕事にすることはできません。だから熱機関は、受け取った熱の一部を必ず低温側に捨てます。エネルギーの「量」は保存されても(第一法則)、「使いやすさ」は失われていきます(第二法則)。
まちがえやすい点・モデルの条件
「エネルギーは保存されるのだから、熱を全部 仕事にできるはず」と考えるのはまちがいです。量の保存(第一法則)と、変換の向き(第二法則)は別のきまりです。
制作:現役の理科教員 / 制作の考え方