物理基礎|力と運動(3)斜面上の物体
斜面の物体は、重力を「分けて」考える
斜面の上の物体には、重力と垂直抗力がはたらきます。重力を「斜面に平行な分」と「垂直な分」に分けると、垂直抗力も加速度も求められます。中学のふり返りから始めて、予想してから5つのステップで確かめよう。
ことばの準備
さきに知っておくこと
- 力の分解1 つの力を、2 つの向きの力に分けて考えること。合わせるともとの力にもどる
- sinθ・cosθ三角比。直角三角形で、sinθ = 高さ ÷ 斜辺、cosθ = 底辺 ÷ 斜辺。sin30° = 0.50、cos30° = 0.87
- 斜面に平行・垂直斜面にそった向きと、斜面から直角に立つ向き。この 2 つで考えると計算が楽
- 垂直抗力斜面が物体を押し返す力。斜面に垂直な向き
- なめらかな斜面摩擦がない斜面のこと。摩擦があれば摩擦力(斜面に平行)が加わる
ステップ1
斜面に置いた物体にはたらく力は?
予想:なめらかな斜面(摩擦なし)に置いた物体にはたらいている力は?
赤=重力、青=垂直抗力、緑=重力の斜面に平行な分、紫=垂直な分。g = 9.8 m/s²。
予想を選ぶと、ここで条件を変えられるようになります。
ためしてみよう
ここが大事
ステップのまとめ
斜面上の物体のまとめ
| ことば・式 | ことばで言うと |
|---|---|
| はたらく力 | 重力(鉛直下向き)と垂直抗力(斜面に垂直)。「斜面を下る力」は別の力ではない |
| 力の分解 | 重力 mg を、斜面に平行な分 mg sinθ と、垂直な分 mg cosθ に分ける |
| 垂直抗力 | N = mg cosθ(斜面に垂直な向きのつりあい)。mg より小さい |
| 加速度 | a = g sinθ(ma = mg sinθ より)。質量によらない |
この図は理解のためのモデルです。摩擦と空気抵抗は考えていません。sin・cos の値は小数第 2 位までで示しています。
公式
この単元の式
| 名前 | 式 | ことばで言うと・単位 |
|---|---|---|
| 平行な分 | mg sinθ | 重力のうち、斜面にそって引く分θ が大きい(急)ほど大きい。すべらせる力 |
| 垂直な分 | mg cosθ | 重力のうち、斜面に押しつける分θ が大きいほど小さい |
| 垂直抗力 | N = mg cosθ | 垂直抗力 = 押しつける分(つりあい)水平な床(θ = 0)では N = mg |
| 加速度 | a = g sinθ | 加速度 = 9.8 × sinθma = mg sinθ の両辺の m が消える。質量によらない |
手順:①斜面に平行・垂直の向きを決める ②重力を分ける ③垂直な向きはつりあい、平行な向きは運動方程式。
重要語句
この単元でおさえること
確認問題へ問題ページへ →実験道具:力の合成・分解角度を自由に変えて、力を 2 つに分ける練習をしよう →実験のあとに読む
なぜ斜面の向きで分けると楽なのか
何を比べる?
角度を 10〜60° に変えたときの、重力の平行な分・垂直な分・加速度を比べます。質量を変えたときの垂直抗力と、2 つの質量を同時に放したときの着く時刻を比べます。
結果をどう考える?
物体は斜面にそってしか動けません。だから、動く向き(斜面に平行)とそれに垂直な向きで力を分けると、垂直な向きは「つりあい」、平行な向きは「運動方程式」と、別々に考えられます。重力をそのまま使うより、ずっと計算が簡単になります。
まちがえやすい点・モデルの条件
「斜面を下る力」という力はありません。重力を分けた一部です。力の矢印を描くときは、重力・垂直抗力(・摩擦力)だけを描き、分けた成分は点線などで区別します。
制作:現役の理科教員 / 制作の考え方